1970年代のインダストリアルデザインがモチーフ

その姿を見て驚かされるのは、大型の横レクタンギュラーのスタイルである。横幅は62.75mmにもおよぶ。この大型ケースの約3分の1のスペースは、トゥールビヨンキャリッジを格納するスペースだ。

ケースの前後および右側面はサファイアクリスタルで覆われたシースルーとなっており、その精緻な動作をどこからでも鑑賞できる。また、時刻表示部分の6時位置底面には、90時間におよぶ長大なパワーリザーブのインディケーターが配されるなど、機能の高さとユニークさに事欠かない。

このダイナミックなデザインは、1970年代の家電製品やトラベルウォッチに着想を得ており、「アンジェラスが操業を停止せず、独創的な時計を作り続けていたら」という仮定に立って開発が進められたという。それゆえ、アヴァンギャルドななかに、どことなく懐かしさを感じさせる印象があり、伝統ある名門ブランドの復活を告げるにふさわしい時計となっている。

横方向に動く液体によって、時刻を表示

HYTの時計の中身はれっきとした機械式時計だ。ゼンマイで歯車が動き、精度を脱進機によって制御している。だが、このHYTの場合、その機構の終端部にはベロー(液体を送り込むポンプシステム)がある。

このベローの蛇腹構造が色の付いた液体を押し出し、それが導管内を満たして時刻を表示する。そして、12時間経過するとこの液体は、元のベローに吸い戻されて、また同じ動作を繰り返していく。

HTYはH1から始まり、これまでH2とバリエーションを増やし、確実に進化を遂げきた。そして今年は、H2に新素材を採用したモデルとまったくあたらしいコレクションとなるH3を登場させた。

H3ケースは横に長いレクタンギュラーに。ペローはケースの上方に向かい合わせにセットされた。色の付いた液体は左から右へと導管を満たしていく。そして、6時間を経過すると一気に左側へとまた吸い寄せられる。時刻を表示する数字は、下にセットされた4面の立方体に書かれている。

それぞれの面に0~5、6~11、12~17、18~23と6時間毎の時刻のインデックスが書かれており、液体がリセットされると同時に立方体が回転。次の6時間のインデックスが上を向くという具合だ。このようにリニアで時刻を示すことは徹底していて、時計の右下側にある分の表示部分も、横一直線に動くレトログラード式の指針で表示する。これも相当に複雑な機構であり、鑑賞するに値する動きが繰り広げられる。

ヨットの舷窓をイメージしたデザインが印象的

「ニューポートヨットクラブ」コレクションは、アメリカの港町にあるヨットクラブに由来している。幅広くフラットでマット調にしたベゼルが、非常に特徴的で、これはヨットの舷窓をイメージしている。

12時位置には舵輪を彷彿とさせるアップライトインデックスを配置、上下にあるストラップのアタッチメントも、舷窓のヒンジの造形を思わせるデザインだ。

インデックスや針にも、船の形を模っていて、きめ細かなデザインだ。文字盤の発色が美しく、繊細なサンレイ装飾が好仕上がりで、文字盤をグラデーションで彩っている。このモデルは流行色であるネイビーで文字盤とストラップが統一されていて、ブランドとコレクションの持つ、海のイメージをひと際強調している。コストパフォーマンスに優れた自動巻きモデルでもあり、10気圧防水も申し分ない。機械式時計の入門者にも積極的にお勧めしたい時計である。